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コロナサーフの特徴 コロナ放電による電荷付与の役割

前回示したコロナサーフで測定した初期電位Viと標準電極電位E°の関係は、購入したままの圧延金属板をアセトン で拭いたのち測定したものです。
従ってその表面は材料によっては酸化が進行していて安定な酸化膜が生成しているはずです。
それでは、この表面を磨いたらどうなるでしょうか?図6は、図3と同じ試料を#800の研磨ペーパーで磨いた後アセトンで拭いて5分経過後の測定結果です。
初期電位Viは変動はあるものの大きな変化は見られず標準電極電位との関係も研磨前とほぼ同様でした。
これは、ペーパー研磨による表面の変化に対して初期表面電位Viの測定だけでは感度が低いことを意味します。
一方、コロナ放電により電荷付与後の表面電位シフトdV0を見ると、安定な表面のAu,Pt,Crを除き、研磨前と後で大きく+から-側へのシフトが起きていることがわかります。
(図7)コロナ放電による電荷付与を利用することにより、表面の酸化層等の変化を感度よく検出できるのがコロナサーフの特徴です。

表面電位とは何か? コロナサーフで何を測っているのだろうか?

ケルビンプローブによる振動容量法で測定しているのは一体何なのでしょうか?
異なる金属表面を接触(電線でつなぐ) させた時、二つの金属表面に異なる電荷が現れます。
この帯電による電位差を接触電位差(Contact Potential Difference) と呼びます。
接触電位差は二つの金属の仕事関数(表面から電子を奪うために必要なエネルギー)の差になります。
つま り仕事関数の小さい金属の表面から大きい金属の表面へ電子が移動することによって電位差が発生します。
実際の測定は、 非接触で試料表面から数mmの距離でプローブ電極(金Auめっき)をピエゾ素子で音叉のように振動させ、電極間の静 電容量を変化させた時に発生する交流電流を測定し、その電流をゼロにするような直流電圧を接触電位差の出力として利 用します。
このようにコロナサーフで測定される表面電位はプローブ電極(金)と試料表面の相対的な電位差です。
つまりどの物 質(表面)が金(Au)に対してどのくらい電子を出しやすいか、受け取りやすいかを測定しているわけです。
こうした電子授受能は、仕事関数のほかに標準電極電位(標準酸化還元電位)E°であらわされます。
E°は実験値ではなく熱力学 データから計算された理想値です。
コロナサーフで測定される初期電位Viと標準電極電位E°の関係を図3に示します。
これは市販の圧延金属板を購入してアセトンでよく拭いた後5分経過後の測定です。
現実の金属表面は汚染や分子吸着、 酸化、加工変質層などさまざまな状態にあるため理想値は期待できませんが、Vi とE°の間には良い相関が見られます。
E°が負側であるほど(例えばAl,Mg)電子を放出しやすい(酸化しやすい)ためVi(金電極との電位差)は正側に大 きくなります。

コロナサーフとは

表面清浄度測定器コロナサーフは、フランスHEFグループで開発されたユニークな表面電位測定装置です。
コロナ放電による電荷付与とケルビンプローブによる表面電位測定を組み合わせることによって、汚れや酸化、腐食などの金属表 面の変化を感度よく検知することができます。
金属表面の清浄度管理は、あらゆる表面処理や接合加工において品質の信頼性を確保するために非常に重要な課題です。
金属部品や金型の表面は、機械加工や研削・研磨加工、放電加工、熱処理、洗浄などの履歴を経て最終的な表面処理(たとえばPVDコーティング・めっき・塗装)工程にまわってきます。
この時の金属表面は砥石の状態や洗浄液の状態などによって必ずしも一定の表面品質を保っているとは言えません。
目に見えない表面変質層や、工程間の保管環境による腐食などによって後工程の表面処理に密着不良が発生すると、最終工程であるだけに大きな生産コスト増大に直結します。
コロナサーフは生産現場で簡単に使用でき測定時間も数分と短いため、こうした生産現場での品質管理に力を発揮します。
一方コロナサーフは表面電位測定ですので、測定しているのは測定プローブ(金)との間の金属表面での電子のやり取 り(授受)です。
汚れの種類など元素に関する情報は直接には得られません。
従ってコロナサーフの測定データが何を物 語っているかを正しく理解するには、他の分析手段も併用して多くのデータ蓄積が必要となります。
また、これまで表面 清浄度の評価によく用いられてきたのは液滴の接触角測定や濡れ指数の測定などであり、コロナサーフとは測定原理がま ったく異なります。